そのキスで教えてほしい
不適な胸の音を感じながら、休憩スペースの自販機でお茶のペットボトルを二本買う。

そして、深呼吸をした。
意識するな、と自分に言い聞かせる。

それでも夢中で鳴る鼓動はどうにもできず、私は俯き気味で歩き出した。

「お待たせしまし……た?」

オフィスへ戻り、崎坂さんに声をかけようとしたら、彼はデスクにうつ伏せている。

え? と覗くように見てみると、崎坂さんは目を閉じていた。

まさか、眠ってしまった?

私は瞳をぱちぱちとさせ、もう一度彼の顔を覗く。

綺麗。寝顔も整っていて、長い睫毛が羨ましい。

なんて、私、見すぎ。
いくら見放題だからってこんなに不躾にじろじろ見て……でも、無償に見つめたくなる。

私は椅子に座り、動いてそっと崎坂さんに近づいた。

熱く鳴る鼓動。
崎坂さんを見つめ、甘くしびれるような痛みが胸に広がる。
< 78 / 103 >

この作品をシェア

pagetop