そのキスで教えてほしい
しかし同じ課でデスクがとなりとなると、まったく喋らないということは無理だ。
必要最低限の会話をしながら、崎坂さんを意識する自分に悩んでいた。

誰か教えてよ、崎坂さんの気持ち。
明確なことを言ってもらえないから、私もどうしていいのかわからない。

でも、これが崎坂さんなのだろうか。
女性に対して軽い考えの彼は、これが楽しいのかもしれない。

ということは私はやはりからかわれている、というわけだ。

たどり着いた自分の考えがあまりにも虚しくて、お昼休み、社内の通路を歩きながら溜め息を吐いた。

胸がいっぱいで昼食もあまり入らなかった。

ぼうっとそのまま歩いていると、部署の入口で崎坂さんの姿を見つける。

気まずいという思いでいっぱいで、私は俯いた。
このまま下を向いて彼のそばを通ればいい。

「崎坂さん」

そう思っていたとき、私の耳に女性たちの朗らかな声が聞こえてきた。
少しだけ顔を上げて見ていると、崎坂さんが部署の女性社員たち三人に囲まれている。

「今日飲み会しませんか?」

「ええ、どうしようかな」

「しましょうよー!」
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