そのキスで教えてほしい
聞こえてきた会話は楽しそうで、喉の奥に何かが詰まったような息苦しさを感じた。

崎坂さんは女性にモテる。
こうして彼が女性に囲まれている姿は、何度か目撃したことがある。

なのに、今まで感じたことのないもやもやしたモノが胸に広がった。

可笑しい。こういう気持ちになるのは、絶対に可笑しいのに――

私は唇を強く結んで体の方向を変え、歩いてきた通路を戻った。
自販機で飲み物を買おう……。
その間に彼女たちがいなくなっていればいい。

『飲み会、行くんですか?』

気になってもそんなことを崎坂さんに訊けるはずがない。
「行く」と答えられた時の反応に困ってしまうもの。

私は自分の考えに呆れ、やってきた自販機の前でふう、と息を吐いた。

そしてレモンティーのペットボトルを買ったとき。

「――あ、鈴沢さんだ!」

弾んだ明るい声に振り向くと、湖島さんが笑顔でこちらにやってきた。

「こんにちは、湖島さん」

挨拶をするとさらに、にっと口角を上げて私を見つめてきた。

「どうした? なんか困ったことでもあった?」

「え?」

「暗い顔してたような気がしたんだけど」
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