そのキスで教えてほしい
困惑しながら崎坂さんを見ると、彼は眉根を寄せて私を見下ろしていた。
その瞳が揺れているような気がする。

壁に押しつけられて、私の胸はおかしいくらいドキドキしていた。

胸の音は静まらない。

「昼休み、湖島に誘われてただろ」

「……え?」

私は昼休みのことを思い出した。
湖島さんに遊ぼう、と言われたこと。

「『どっか行こう』って誘われてたよな。これから行くんじゃないのか?」

崎坂さんは眉を顰めたまま、険しい声を出す。
苦しそうな表情。
どうしてそんな顔をするのだろうかと、崎坂さんを見つめた。

そして、よくないことを思いつく。

「だったら何なんですか」

今日誘われてなんかいないけれど。
試すように答えたら、崎坂さんは拳を壁についた。

「……行くなよ」

眉根を寄せ、瞳を揺らす崎坂さんにどきっとして、彼を見つめたまま固まった。

「他の男と二人きりなんてさせたくない」
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