そのキスで教えてほしい
そして目を細めた崎坂さんの右手が、私のワイシャツのボタンを外していく。

「鈴沢のことばかり考えてる俺は、こういうことをしたがってるから。恋人にならないとできないこと」

「私、恋人になるんですか?」

「……俺の恋人になる気がないのか?」

細めていた目が開き、動かしていた手が止まった。
私はにやりとする。

崎坂さんのそういう顔は珍しいから、見ることができるとうれしくなる。

「いいえ、恋人になりたいです。崎坂さんが好きでどうしようもないから」

わたしは自分なりにゆったりと、甘ったるくそう言った。

「……あのなぁ、鈴沢。……まったく、俺を慌てさせるなよ」

崎坂さんは困ったような表情をしながら、再び唇を重ねてきた。

「今夜はもう離さないから、覚悟しろ……由麻」

甘い囁きに、体がしびれた。

近づいて、手に入った温もりに安心して。

これでもかというくらい、嬉しくて、愛しくて。

優しい腕に抱かれて眠りについた。
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