凸凹を喰え

「将兵さん、どうですか今」

 俺は『凹凸』を食べ続けている丁髷(ちょんまげ)姿の将兵さんに声をかけた。

「あいかわらずぼちぼちだよ。好(このみ)君は来たばかりだからそんなに焦るんだな。あと百年も喰い続けてれば慣れるさ」

 将兵さんは凸を食べていた手を止め俺を横目に見て目を細めた。

 好。俺の名前だ。

 この名前を自分の家族に呼んでもらえることはもうないだろう。

 でもそれでも誰かに自分の名前を呼ばれることは嬉しいことだ。

 ここへ来てからだいたい三十五年が経っている。

 俺が三十の時にこっちへ飛ばされたから俺は今、年齢があるとすれば六十五だ。

 だが姿かたちは三十五のままだ。
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