凸凹を喰え
「将兵さん」
「喰え」
「いや、一つだけどうしても」
「…………」
「あのさ、将兵さんとこの凹凸の向こう側、昔の映像が映し出されてるじゃん、それって何」
「俺が居たところだ」と、新しい凹を手に取り口に入れながら言った。
「そこから来たの?」俺も新しい凹を手に取った。
「そうだ。そしてこれを喰い終わったら俺はそこに戻る」
「えっと、今もあるのかなそこ」
「……わからん」
終わりだとばかりに手を振り、凹を噛みながら目の前の映像を定めるとなく見ていた。
俺のところはまだ何も映し出されはしない。
いつになったら出るのかは将兵さんにも分からないということだ。
後方、遠くの方で叫び声が聞こえてきた。発狂した女性の声だ。