ブレスフル クリスマス
「オレの名前、言ってなかったよね?」
そう言いながら
スーツの内ポケットから取り出した名刺を私に差し出す。
横書きの名刺には
“大川電気工業株式会社 工事部 水原謙司”
って書かれてある。
水原さんゆうんか。
ケンジってこんな字書くんや。

「トウコちゃんは?なにトウコ?」
「児島です」
「小さい島?」
「球児の児に島です」
「トウコってどんな字?」
「透明な子。存在感薄そうですよね」
私、苦笑いする。
今まで散々、そう言われてきた。
だから、私はあんまりこの名前が好きじゃない・・・。

「冬生まれ?」
「はい、2月ですけど・・・?」
「早朝?」
「・・・あ、はい」
なんでそんなこと聞くんか分からんかったけど

「冬の早朝の透明な空気のように透き通った心を持ってほしい」

そう言って謙司さん、にっこり笑う。

こんな風に解釈してくれた人、初めてや。
そない思ったら、素敵な名前に思えてきて・・・
心がほわっと温かくなった。
なんか、謙司さんってすごいな・・・。
ホンマにそうなんかな?
今度、お母さんに聞いてみよ・・・。


そんな話をしてる間に運ばれて来てたミルクティのカップに口をつける。
謙司さんはコーヒー。
当然のようにブラックやな。
どこまでも大人やわ・・・。
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