ブレスフル クリスマス
-11-
「あのー・・・ひとつ聞いてもいいですか?」
私、少しためらいがちに聞くと
「いいよ」
快く応じてくれる。

私には関係のないことやけど
関わってしまって気になるあの・・・
志穂さんのこと・・・・・・。

「・・・志穂さんに会いに行ったんですか?」

私のその問いに
謙司さんの顔に一瞬、驚きの色が灯ったけど
口に付けてたコーヒーカップをソーサーに静かに戻しながら
「行ったよ」
素直に答えてくれた。

「ちゃんと・・・話したんですか?」
「話もなにも・・・円満離別だからね」
円満離別・・・?
私が「?」って顔をすると
謙司さんが話し始める。

「志穂は田舎の開業医の箱入り娘で、少しくらい世間を見てみたいってことで家を出る許しをもらったらしいんだ。いずれは戻って医者を継ぐって約束でね」
「志穂さんってお医者さんなんですか?」
「いや、普通にOLしてたよ。医者に婿養子に来てもらうんだってさ」
「それ・・・分かってて付き合ってたんですか?」
「うん、分かってたから・・・たぶんフラットな付き合い方ができたんだと思う」
「それって・・・恋愛ですか?」
思わずそう言ってしまって、慌てて口をつぐむ。

「ハタから見ればそう思うかもしれないけど、オレたちはオレたちなりにちゃんと恋愛してたよ。そういう恋愛の形があってもいいんじゃないかな?」

終わりの見えてる恋愛もアリってこと?
謙司さんくらいの年齢になると
チラつく将来を見やんでいいから逆にラクなんかな?
私にはよく分からんや・・・。

それにしても謙司さん
なに聞いても正面からきちんと答えてくれるな。
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