ブレスフル クリスマス
駅前からだいぶ走って来て
気付いたら人通りがぱったり途絶えてた。
市役所のそばにある広場で
ついに謙司さんに捕まる。

はぁ はぁ はぁ・・・

2人ともめちゃくちゃ息が乱れてるけど
謙司さんは私の手首をしっかり掴んでる。
広場には私たちの息遣いだけが響く・・・。

「もう・・・逃げませんから・・・離して下さい」

少し息が整ってきて
謙司さんに背を向けたまま・・・
そう言ったけど
謙司さんはさらに
ぎゅっ
私の手首を掴む手に力を入れた。

「こっち向けよ」

今までと全然違う雰囲気で言われて
ドキンッ!
心臓が高く跳ねる。

私、素直に振り返る。
謙司さんが手を離す。

「なんでこんなとこにいてはるんですか?」

ここは照明が少なくて比較的暗い。
よかった・・・。
あんまり表情見えんから、落ち着いて話せる。

「気になってる女の子が泣きながら電話かけてきてるのに、ほっとけるわけないだろ!?」

落ち着いてる私と対照的に少し険しさを含んだ口調の謙司さん。
その口調とセリフは
“出張先で出会った女の子”
に対するものではなく
“気持ちを通い合わせたい相手”
に対するそれなんちゃうかと
いやがおうにも期待してしまって・・・
胸がドキドキし始める・・・・・・。

だんだん目が慣れて、謙司さんの表情が分かるようになってきた。
すごく心配した。って顔してる・・・。
謙司さんをこんな表情にしてんのは
私、なんやな・・・?

常に落ち着いてた謙司さんが
すごい息切らせて、追いかけてきてくれて・・・
しかも・・・

「それで普通、新幹線で3時間もかけて来る?」

胸はこんなにドキドキしてるのに
うれしさも手伝って
思わずクスッと笑ってしまった。

「オレは来るんだよ!」
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