小さな
今にも逃げ出してしまいそうな
自分を留めるために
顔を上げ
辺りを見渡した。
どうせいつもと
変わらない景色。
そんなふうに思っていた。
でもいざ見上げた空は
とても暗いはずなのに
夕日がまだ沈むまいと
踏ん張っているようだった。
それに
私のように疲れた人達を
たくさん乗せた電車が
人々を家へ送り届けるべく
もうひと頑張りだ
と働いていた。
「 綺麗 」
こんな前向きな独り言は
いつぶりだろう。
もう少し頑張ってみよう。
落ちそうになった涙を拭き取り
私は走りだす。
黒い雲から
差し込む夕日は
そんな私の背中を
静かに照らしていた◇*。