抱えきれないほどの花束をあげよう!
そして、いよいよ新学期が始まって女子寮暮らしの女子高生としては初めての学校生活が始まった。

まるで、昨日入学してきた新入生みたいな気分だ。


敦美は2年2組になり、担任は七橋享祐だとわかった。


「敦美、また同じクラスになったわね。」


と、声をかけたのは1年のときもクラスメイトだった須藤楓だった。


「楓ちゃんもいっしょだったんだぁ。よろしくね。」


「ねぇねぇ、担任って風紀の七橋先生だって。
なんか怖いわねぇ。」


「怖い先生なの?」


「あ、うるさいのは生活指導の高木先生の方だけど、七橋先生って一見うるさそうでないだけ、陰で何をしてるかわからないって噂があるのよ。
見た目だっていかにも怪しそうでしょ。

昔、顔にケガを負ったからってちょっとむさくるしい感じの髪だし、ときどきチラっと見える目が怖いって噂もあるわ。」


「へぇ、さすが楓ちゃんは情報ツウなんだね。」


「えっへん!まかせてよ。
私はみんなの楽しい学園生活のために、日夜情報を集めているのよ。
だから新聞部に所属してるの!」


「あ、そうだったね。」


「ねぇ、あんた去年は家族の状態が不安定だからって家庭科部やめちゃったでしょ。
今年はどうするの?
家族のしがらみもなくなったのなら、うちの部に来ない?」


「う~ん・・・考えてとく。
私、まだ寮暮らしに慣れてないから。
それに、寮の方で企画長に選ばれちゃって。」


「なぁに、その企画長って?」


「ふだんは雑用係みたいなものなんだって。
で、寮でときどきお祭りみたいなお楽しみ会みたいなお誕生会みたいなのがあって、その企画を主にやるの。」


「へぇ、寮ってそういうこともやるのね。
じゃ、がんばって!じゃ。」


「あっ楓ちゃん!楓ちゃんは風のようにあっちこっちとんでいくわね。」



そして、新しいクラスで最初のホームルームの時間・・・。
敦美は企画長の肩書きのおかげで、クラス委員を免れた結果となった。


「高瀬、ちょっといいか。」


「あ・・・七橋先生何でしょうか?」


「君、去年クラブをやめて今は何も所属してないそうだね。」


「はい。」


「じゃあさ、美術部に入ってくれないかな?」


「えっ?ど、どうして私が美術部に入らなきゃいけないんですか?」


「じつは、マネージャーと兼任してた子が転校しちゃってね。
君は去年家庭科部だったらしいし、今年は寮の企画長でもあるんだってね。」


「はぁ。」


「何かと雑用があってさ・・・うちの部もね。
いや、べつに雑用係がほしいってわけじゃなくて、君には立派な絵を出品してほしいと思ってるし、絵は俺が教えるから心配しなくていい。
だめかな?」


「でも、寮でも雑用があって部もなんて・・・両立できるのかわかりません。」


「心配いらないよ。
寮の企画長はまとめ役なだけだろ。仕事そのものはみんなで用意することばかりだからね。
男子寮の企画長やってる前田なんて、陸上部のエースだからな。
できるよ。」


「わかりました・・・やってみます。」


「そっかやってくれるか!じゃ、今日から美術室に来て。
絵を教えるから。」


「今日から活動なんですか?」


「今日は顔見せだけだけどね。活動は来週から。
だけど、挨拶は今日しておくべきだからね。
っというわけで、あとで来るように!」


「は、はい。」
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