抱えきれないほどの花束をあげよう!
だんだん事の重大さがわかってきた敦美が思わず、逃げ腰にそう言うと、七橋は


「何度もレシピを考え直して、料理を何度も味見をしている高瀬はとても根気強くてたくましい娘だって今年転勤していった小山先生が言ってたぞ。

家庭科部の優勝したあのレシピは君が考えたものらしいじゃないか。
ちゃんとネタはあがってるんだゾ!」


「先生・・・どうしてそれ。」


「ははは、一応調べさせてもらった。
美術部は部員も優秀だが、顧問だって生徒みんなのために優秀な教師だって言いたいからね。
だから、君に頼みたいんだ。」



「そんなにすごい人だったんだ!高瀬さんって。
ぜひ、入ってほしいな。」


「沢井先輩・・・。」



「な、みんな、君に期待し始めてるぞ。
高瀬、がんばってみよう。」


「はい、がんばりますのでよろしくお願いします。」



「七橋先生がそこまでいうなんてめずらしいもの。
これからがんばって!」



「はいっ!」



「ってみんな納得してくれたところで、今日は手始めに彼女のデッサンからいってみようか!」


「えっ・・・わ、私?」



「高瀬、せっかく顔見せ自己紹介も終わったんだ。
みんなに美人に描いてもらうんだよ。」


「あ、あの私・・・モデルなんて初めてで・・・どうすればいいのか?」



「その椅子に座って目線はあっちで、初めてだから手は膝の上あたりで、すましててもらえばいいよ。」


「そ、そんなぁ。」


「おお、いい感じだ。かわいいぞぉ。」


敦美は絵のモデルをしながら、大変なことになってしまったと思い、ときどき顔がひきつるのを感じた。

ただでさえ、まだ寮生活も慣れないのに、こうなってしまったことを誰に相談したらいいのだろうか?

考えればため息ばかり出るしかない。


それもこれも、風紀の七橋にスカウトされてしまったからだ・・・と七橋の方を見ると、デッサンをしながらニコニコと笑っている。

ずっとこの調子でだまし討ちみたいに過ごさなきゃならないのだろうか?


少なくとも、クラブの仕事中は七橋には近づかないにこしたことはないと敦美は思った。


「大丈夫さ、そのうちこの部に所属しておいてよかったと思うことになる。」


いつの間にか真横にきていた七橋がそうつぶやいたことに敦美は驚いていた。


(私の心の中を読んでいるの???)
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