抱えきれないほどの花束をあげよう!
敦美は地図を見ながら画廊へと出向いた。

「すみません・・・私は、雅光高校美術部の・・・」


「高瀬か、早かったな。」


「七橋先生!!お怪我は大丈夫なんですか?」


「体はこのとおり元気なんだが、右手がね・・・人差し指骨折でさ。
これがけっこう不自由だったりするんだ。」


「骨折なんて、大変じゃないですか。」


「まぁ、脳震とうもあったんだけど、検査結果がよかったから、手だけね・・・。
申込書を書けなくて・・・高瀬書いてくれるか。」


「はい。もちろん。そのために来たんですから。」


「高瀬をマネージャーにしておいて、よかったよ。
ここを今年借りられないなんてことになったら、合宿や文化祭にもひびいてしまうからねぇ。」


「これでいいですか?」


「うん、完璧!それを事務室に出してきて。
それと、ちょっとそのあと、筆をまとめ買いしたいからつきあってくれ。」


「わかりました。」


七橋に言われるまま、筆や絵の具など、まとめ買いした敦美だったが自分で全部持つこともできずに、困っていると。


「俺のリュックに入れてくれないか?
俺がかついで帰るから。」


「でも、先生・・・どこかで右手をつかなきゃいけなかったら痛いじゃないですか。」


「私が背負いますよ。」


「いいから、女の子の力じゃ無理だって。」


「でも・・・先生の手じゃ・・・」


「意外に頑固なんだなぁ。
じゃあ、俺が背負うから高瀬がうちまで送ってくれないか。
寮まですぐだろ?」


「はい。先生の住んでるマンションって男子寮の近くでしたよね。」


「確かに近くなんだけど、マンションじゃないんだ。
4年前まではマンション暮らしだったけど、いろいろあってな・・・今はちょっとボロいけど戸建てでな。
あ・・・先に言っておくが、玄関まででいいからな。
中にはあがってくるなよ。

女子寮の前まで送ってくから。」


「いえ、そんなわけには・・・先生はけが人なんですから、私は玄関に買ったものを置かせていただいたらすぐに帰ります。」


「そういうわけにはいかないだろ!もう薄暗いし、女子寮の近くは変なやつが出るというしな。」


「でも・・・」


「でもはなしだ!今度はいくら高瀬が強情でもきいてもらうぞ。」


「は・・・はぁい。」


「女の子は素直なのが一番だ!」


「私・・・そんなに強情ですか?」


「まぁな。けど・・・高瀬の場合理由があっての強情だろ?
例えば、今日は俺が手が不自由だから・・・だな。」


「ええ・・・まぁ。」
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