抱えきれないほどの花束をあげよう!
それから万須美は嵐の夜のことは夫には詳しく話さないまま、3か月が過ぎた。


高校にも慣れてきて、最初の頃よりかは幾分過ごしやすくなっていた。


それに、ずっと敵扱いだった直弥が相変わらず口数は少なめだが、ときどきケーキなどのお菓子を買ってきてくれたり、車を掃除したあとに街まで買い物につきあってくれたりと優しくなってくれたのも敦美にはうれしかった。


「直弥兄様、そんなに出かけるたびに甘いものを買ってくれたのでは、私・・・太っちゃいます。
気を遣わないでください。」


「気を遣ったりはしてないけど?
ただ、おまえがケーキをうまそうに食ってるのを見てると俺も幸せな気分になるんだ。
仕事でストレスが溜まってるのかもな。

まぁ、おまえは俺のストレス解消剤だな。気にするな。」


「えぇ!何それ?もう・・・じゃあ、ケーキやクッキーをやけ食いしちゃうから!」


「なんだそりゃ。ははっ。
いっぱい食って太っていいからな。
おまえが太ったら、ダイエットで運動するのを手伝ってやるよ。」


「遠慮しますぅ!」



「敦美もすっかり直にいと仲良しだな。
ときどき見てると、イラついてくるけどな。」


「えっ?どうして・・・冬弥兄様」


「それはね・・・敦美が最近とてもきれいになったからさ。
学校のせいだったり、俺たちと住んでることだったり、理由はいろいろあると思うけど、直弥と仲良くなってから、君はどんどんきれいになっていく。

気付いてるかい?」


「そんなこと・・・ないと思うけど・・・。
それに、私まだ高1だし。
お兄様たちとは年だってかなり違うし・・・私なんか子どもだから。」



「俺はそんなに子ども扱いはしてないつもりだけどねぇ。」


「俺もだ。勝手に人を年寄り扱いすんな!」


「あちゃ、直弥は耳が遠くはなかったんだね。
まずったな。あははは。」


「冬弥のやつぅ・・・あ、そうだ。
敦美、今夜父さんたちが俺たちに話があるらしいから、夕飯がすんでも部屋にすぐにもどるなよ。」



「あ、はい・・・。何かしら?」


「俺はあまりいいことではないんじゃないかと予想してるがな。」



「直弥兄様?いいことじゃない?」



「ああ、たぶん。今のうちに言っておくよ・・・敦美。
俺のせいでつらい目にあわせてしまったなら・・・ごめんよ。」



「兄様のせいって・・・?
私は何を言われても平気よ。もともとついてきただけだし、気にしないで。」



「そっか。そういってくれたら俺は・・・。
いや、敦美が元気で笑っていてくれたらそれでいいんだ。」






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