抱えきれないほどの花束をあげよう!
2学期も半ばを過ぎて、体育祭も終わり、冬になる前に文化祭準備に入っていた。
雅光高校の文化祭のいちばんの出し物といえば、2日目最終の仮面舞踏会である。

それもクラス全員が衣装に着替えることはない。

大半の生徒は宣伝や、誘導、会場づくりの係になる。

今年の2年生は3分の1が踊り担当で、なんと敦美はクラスの推薦で眠れる森の美女に扮することになってしまった。

「美女の方は決まったけど、起こす方の王子は誰にするんだよ!」


「そうだ、高瀬とキスする権利なんていくらマネ事だっていっても希望者は多いんじゃないか?」


「3年の男まで希望だって叫んでたぞ。」


「それ、マズいだろ。うちのクラスの出し物なんだから、クラスの男子でいいじゃないか。」



クラスの男子がもめている間、女子たちの間でもそれについて異議が飛び交っていた。

「敦美、なんかクラスの男どもがもめてるわ。
こんなことなら、美女と野獣でもして出し物変えればよかったのにねぇ。」


「そうね。私も疲れた頃に寝ていられるって喜んだのもつかの間だったわ。
王子様が起こすなんてきいてなかったもの。」


「でも、困ったわねえ。誰かにキスされちゃうのよ。
いくら、唇にラップを貼ってたって、大接近しちゃうんだから、気持ち悪いことこの上ないわよねぇ。

それにもしかしてだけど、敦美にとって大切なファーストキスじゃないの?
敦美は真面目だから、これ重要な問題よね。」


「ふぅ・・・。」


敦美はまさか、ここで濃厚なキスを担任としちゃいましたとは言えなくて、ため息をついていた。


しばらくして、実行委員のクラス委員がやってきて、声をあげた。


「眠れる森の美女の件ですが・・・風紀の乱れを誘発することは禁止です!
よって、美女を起こすシーンでは、大福を美女役の唇に当ててあげてください。
そのように、シナリオ変更となります。以上!」


「あら・・・大福ってギャグかハロウィンにお祭りが変わってしまいそうね。」


「でもさ、敦美よかったじゃない。好きでもない男子にキスされなくてさ。
おいしい大福にこしたことはないでしょ。」


「そうね、それならパクリと美味しくいただいちゃう!」



そんな楽しい話題が飛び交っていた頃・・・敦美のところに冬弥からメールがきていた。


「あ、冬弥兄様からメール。めずらしいわね。
ほとんど電話が多いのに。

え~と・・・直弥兄様が日本に帰ってくるですって。
あっ、事業はかなり縮小したけれど、立て直し成功したって・・・すごいわ。

それで、これから日本で仕事する・・・って。ええっ!そうなの。わりと近いじゃない。
文化祭が終わるころに学校に迎えに来るって。

そうなんだぁ。直弥兄様が帰ってくるのね。」
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