抱えきれないほどの花束をあげよう!
直弥と敦美は2人でダンスパーティーの会場へ行き、踊り始めた。

「すごい、直弥兄様ってダンスが上手ね。
それに高校の中もスイスイ・・・でびっくりしちゃった。」


「当たり前だろ、俺もここの卒業生なんだから。
校舎は新しくなったり、リフォームされていても外側のことはみんな覚えてるって。」


「そうなんだ。うっ・・・のどが。」


「どうした、敦美?」


「さっきの大福が、お腹すいてたから食べて踊ったら少し口に残ってて喉にひっかかってるみたい。
飲み物買ってくるわ。」


「待ってろ、俺が買ってきてやる。
普通の果汁のジュースでいいな。」


「うん、ごめんなさい。」


敦美がベンチに腰掛けて喉をおさえていると、スッとお茶の入った紙コップが出された。


「えっ?」


「めんどくさいお姫様だなぁ。喉に餅でもつめたのか?
それとも、お茶も口移しであげないと気に入らないのか?」


そうつぶやきながら、鋭い目が睨んでいる。
後ろで束ねる銀色の髪に海賊の衣装がさまになっていて、見とれずにはいられない。


「あ・・・すみません、いただきます。」


「踊りながらエスケープしないか。」


「はぁ?だって今、直弥兄様がジュースを買いに行ってて。」


「だからだよ。すべて見てた。
俺の姫にキスしたあげくに逃亡をはかっている。
これは見逃すわけにはいかないな。

逃亡していいのは俺だけだ。
反論はいっさい認めない。」


「でも・・・」


「あとで、冬弥に電話はいれる。心配はいらない!
来るんだ!」


「ああっ、ちょっと、私は荷物じゃないのに、担いでいかないで!」


享祐は寮の管理室まで敦美を担いだまま移動すると、入り口にカギをかけ、管理室のソファに敦美を下ろした。

そしてすぐに敦美を押さえつけるようにして唇にキスをする。


「ん・・・うぅ。うぁ!」


「浮気も本気も許すほど、俺は寛大じゃないんだよ。
そろそろ本気の恋をしてくれてもいいんじゃないか。
少なくても、1つの恋を終わらせてから次を楽しんでもらわないとな。」


「それは、先生とはもう終わりってことですか?」


「なぜ、そうなるかなぁ?
別れるのは敦美と直弥の方だ。
そろそろ、きちんとした兄妹になるべきだと思うがね。

敦美がはっきりしてやらないと、彼の経営手腕に影響が出る。
それには今、君が決めないといけない。」


「なんで、なんでそんなこと先生に言われなきゃいけないの?
直弥兄様は私を迎えにきてくれたのに・・・。」


「彼が完全に誠実なら俺だって引き下がる覚悟をしてたさ。
けど、彼には・・・直弥には子どもがいる!!」


「えっ?なぜ、そんな・・・どうしてそんなこと先生が知っているの?
冬弥兄様だって言ってなかったわ。」


「調べた・・・。気になってたから。
彼の会社がどうなったのか。彼がどうして日本に突然帰ってくることになったのか・・・。
冬弥にきいたらちょっと引っかかってたんだ。

あいつも引っかかることがあったみたいで、俺の知人に調べてもらうことにした。
その結果が昨日わかってな。」
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