抱えきれないほどの花束をあげよう!
直弥との初めてのデート・・・いや、そもそもデートと呼ばれるものに参加したのさえ、敦美は初めてだった。


とりあえず、街にお出かけするので、お気に入りのよそいきにシンプルなバッグを持って出かける。
ちょっと大人びたように背伸びもしてみたつもりだ。

冬弥と出かけたことは何回かあった。
それでも7つも年上ということで、緊張して冬弥に笑われたことがある。

しかし、直弥とは10才以上年上だし、兄妹じゃなかったら援助・・・いやいやいや・・・直弥はそんなふうには見えないだろう。


実際のところ、直弥が敦美にあわせてくれたようなカジュアルな服装できてくれた。

そして、自分は老けてないかと敦美に尋ねるくらいだ。



「直弥兄様は何を着てても上品なんだから、自信もっていいって。」


「今日は会社は関係ないからな。
これでも気分は大学生くらいのつもりなんだから。」


「何それ、それはサバ読み過ぎでしょ!」


「だめかぁ?じゃ、定番の映画でも見に行こう・・・アニメでも恋愛ものでも敦美の好きなのでいいぞ。」


「えっ、マジで?
じゃあね・・・ラブシーンが話題になったりもしてるアクション映画!
昨日、テレビで紹介されてて、見たかったんだぁ。」


「へぇ・・・アクション映画も話題になるところがアクションじゃないんだなぁ。」


「お店でもほら、ドラッグストアなのに食料品売ってるでしょ。
アレみたいなものじゃないかなぁ。」


「うまいこというなぁ。じゃ、行こうか。」


「うん。」


映画を観て、レストランに入り、ライトアップされてる広場まで出て・・・夜が更けていく。


「楽しいとすぐに時間は過ぎちゃうねぇ。」


「そうだな。きっと、あっという間に敦美は卒業して・・・大学に入ってお嫁さんに行くんだろうな。」


「私がそうなる頃には、直兄様だってすっかり子持ちで貫録十分のオジサンになってるわよ。」


「嫌なこというヤツだなぁ。
俺はさぁ・・・おまえが寮生活することより、自分がアメリカへ行くことの方がつらいと思ってる。」



「えっ!?」


「冬弥は日頃から女の子の多い職場でにぎやかに自由に仕事してるから、おまえとも軽いノリで話せててさ、いつもうらやましかったんだ。

家にも縛られずに、やりたいことをすることができてさ・・・。」


「直兄様のしたいことは、今の仕事とはぜんぜん違うとか?」


「まぁな。俺はいろんなところに出かけて、そこの土地のことや人のことなんかを書き留めて、それを知らせたいなってずっと思ってた。

今の仕事はさ、いろんなところに出張することがあるから半分はかなえられてるといってもいいんだけど、じっくりと書けないだろう?

業績を上げる方が先だから・・・ね。
でも、いつか・・・時間ができたら、書きたいと思うんだ。」


「うん、いいんじゃない?時期がきたらっていうのもいい夢だと思う。
あ、ごめんなさい・・・ナマイキだったかな?」


「いいや、おまえはそういってくれると思ってた。
ただ・・・仕事の夢とは別の夢は・・・少し伝えておきたいかな。」


「別の夢?まだ、何かあるの?」


「それはな・・・ちょっと耳かして。」


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