抱えきれないほどの花束をあげよう!
直弥は妻の家の悪口を並べ立てていたが、話の途中で享祐が言った。


「君の子どもは君のものでなくなってもかまわないっていうのかい?
他の男の子どもとなって、君は満足できるの?」


「それは・・・あきらめて敦美と・・・。」


「残念だけど、敦美はもう俺のものだよ。
この通り、もう俺はお婿にいけない状況だしな。

それと、俺は敦美を幸せにできるだけの用意がある。
よそに子どもも妻もいない。」


「何を言ってる、高校で美術教師などやっている程度の収入で敦美を幸せにするだとぉ!
いい加減に・・・」



「いい加減にしてほしいのは兄さんだよ。
キョウスケ・ナナハシは世界を代表する若手画家だし、会社も経営してる。
じつのお父さんは陶芸で有名な田神享我で、その筋から有名食器メーカーの絵のデザインもやっている。

高校の教師は趣味みたいなものだ。
彼は成功者として、自分の技を若者に伝えたいってだけで先生をやってるんだ。

兄さんと違って大胆で勝負強いし、ビジネスの勉強も完璧だ。」


「なんだと・・・。そうか。
あははははは。そんなすごい裏技持ちだとはね。
冬弥と敦美はそんな協力なコネを持ちながら、俺を助けてはくれなかったんだ。
ひどいなぁ。

敦美は玉の輿じゃないか。
自分だけ裕福に楽しく生きていくつもりだったのか。
俺はバカだな。だまされたのか。」


「俺は前から兄さんを助ける気はなかった。
きっと失敗するだろうと思ってたからな。
兄さんはいつも俺をバカにして、頭から俺は稼ぐことすらできない人間にしたかったんだろうけど、俺は堅実に生きてただけさ。

敦美はまだ享祐が実業家としても有名だとは知らなかった。
彼女は貧乏めいた美術教師に魅かれちゃったらしいからな。

金があれば幸せだとは限らないんだよ。
兄さんだってそれはわかってるだろう?
だから、敦美を迎えたかったんだろう?

だけど無駄だね。
兄さんにとっての本当の幸せは敦美におごってもらものじゃないだろ!
敦美のことを本気で考えているなら、享祐との付き合いを理解してやってくれよ。」


「くっ・・・俺の負けだ。」


「直弥兄様・・・私、何も聞かなかったら兄様と住んでもいいと思ったわ。
でも、奥様のことをきいて、直弥兄様は私の兄さんなんだって強く思ったの。

私の学費のことも大丈夫よ。
私のことを思ってくれるんなら、奥さんの体のことを心配してあげてよ!」


「わかったよ・・・敦美。
どうやら、君はステキな彼を見つけたんだね。
俺はいったん帰るよ。

そして、次に会うときは新居に妻と子といっしょに会ってもらう。
それでいいな。」


「ええ、直弥兄様は優しい人だもん。
家族を守ってあげて。」


「わかった。ありがとう・・・敦美、冬弥。
それと、享祐さん、敦美のことをよろしくお願いします。」


「はい。俺は彼女にぞっこんなので、お任せください。」


「まっ!またそんな・・・」
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