リタイム ーre-timeー
「あ、あの…」
19時、私は神堂にいた。
不安を抑えながら警備らしき男に話しかけ、中に入れてもらった。
「波瀬春様がお見えになりました。」
男が誰かに言う。
様……?誰に話しかけてるの…?
私は心の中ではてなマークが飛んだ。
…すると……
「通せ。」
低く、なんだか深みのある声が聞こえてきた。
「波瀬様、その部屋へお入り下さい。」
「はっ、はい!」
私はその声の聞こえてくる部屋へと案内された。
ドキドキしながらそっとドアに手をかけた。
「し、失礼します…!」
ガチャ
開けた先ではその声の主と思われる人が座っていた。
しかし、黒い網の向こうにいて形がわかる程度だった。
「うむ、よく来たな。」
その人は言う。
「は、はいっ、え、えっと………
あ、あなたは……?」
私は緊張と不安で声を震わせながら言った。
「私か?
ああ、そうか、
まだ自己紹介をしていなかったな。」
その重みのある声に私に余計緊張が走る。
「そうだな…"天界の王"…とでも言っておこうかな。」
「おっおお王!!!?」
私は驚いて目を見開いて食い気味に言った。
「え、えっと…それって神様ってことですか!!?」
神堂だから神様がいるのかもとは思ってたけど本当に存在したとは……。
「ははは、神様か。まあそうだな、そのようなものだ。」
わ、私すごい人と話してる……。
大丈夫かな、失礼なことしてないかな。
て、ていうか神様がどうして私を…
やっぱり地獄に………?
足の震えが止まらない。
「随分怯えているようだが心配はいらないぞ。地獄行きなどではない。」
えっ、本当に…?
「天界ではここは地獄へ送られる場所だと噂されているようだが、そんなことはない。
天国へ行くか、地獄へ行くかはその人が死んだときにそれまでどんな人生を送ってたかで決まる。
ここで悪さをするようなやつは最初から地獄へ送られている。」
あ………
そっか…
確かにここにいる人たちは皆いい人たちだ。
だって死んでいるのになぜだか温もりを感じるんだ、この場所は。
「………じゃあ、私はなぜ呼ばれたのですか…?」
私は少しほっとして聞いた。
「…ああ、今から説明をする。」
神様の声がさらに低く重くなり私にはまた緊張が走った。
「波瀬春、お前は抽選により下界へ戻る代表者に選ばれた。」
「…!?」
言葉が出なかった。