来世はおとぎで出逢いたい
来世はおとぎで出逢いたい
かちゃり、と小さな音を立てて、手のひらに包まれた拳銃が震えた。どこか遠くで、甘い珈琲の水面に唇を浸しながら、誰かが静かに、私とあなたを覗いていた。
「……泣かないで、」
涙が頬を伝って残した線を、あなたの指がゆっくりと拭った。あまりにも穏やかに微笑むものだから、瞳の奥がとにかく熱くて、涙を流す以外に術がない。
身体中の色んな痛みを全部含ませて、これでもかと泣いてみせるのに、まるで涙腺が壊れてしまったみたいに、次から次へと流れる雫は止んでくれない。
泣いたのは私。
引き金に指をかけたのも、あなたを裏切ったのも、欺いたのも、傷つけたのも、ここにある悲しみ全ての原因が、この身体から溢れて転がってゆく。
悪役は私、ただそれだけのことだったのに。
「躊躇わないで、引き金を引きなさい」
いつか私に「愛しているよ」と言ったのとまるで同じ声色で、あなたがそんな風に優しく優しく微笑うから、私は今にでもこの銃口を、自分の頭に突きつけてしまいたくて仕方なくなる。
嗚呼、これは悪夢だ。
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