失恋ワケあり両想い(仮)
「――ったく。名前で呼ぶって約束。しただろ?」
小さくため息をついて私の頭をグシャグシャとかき回した。
グチャグチッャになった髪をとかしながら時計を見る。
――18時05分。
考え事をしていたせいで時間のことをすっかり忘れていた。
「ご、ごめんね。もうこんな時間」
慌てて机の上を片そうと立ち上がった時。
机に乗っていた山のような本や紙が床一面に散らばった。
「わわ。ごめ――」
急いで拾いなおそうとした私の手を彼が掴んだ。
「――いいよ。心優は拾わなくて」
そう言って、落ちた本や紙を私の代わりに全て拾い上げトントンと整えてから机の上に置く。