失恋ワケあり両想い(仮)
「確か、今日だったな」
彼の呟いた言葉にビクッと肩が跳ね上がる。
「母さんから〝帰って来い〟ってLINE入ってた。〝良かったら心優も〟って」
次に心臓が早鐘を打ち息がつまった。
だんだん青ざめてく私の顔を見て彼の力強い腕が強引に私を抱き寄せる。
心を落ち着かせるように彼の胸の中でゆっくり息を吐き出すと気持ちが和らいだ。
呼吸も上手くできるようになり〝痛い〟と思って見た掌には爪の痕がくっきり赤く残っていた。
ゆっくり彼の胸を手で押し体を離す。
「……ごめん。もう、大丈夫」
私の顔色を見て安心したのか彼の手がまるで宝物でも扱う様に優しく私の頭を撫でそのまま頬にそえると優しく微笑む。
「そうか。良かった。俺こそごめん…まだ、早かったな」
私の方こそ申し訳なかった。