失恋ワケあり両想い(仮)
――悠の死から数週間が経った。
あの日からずっと、私だけが前に進めずに。
悠のことを忘れられないでいた。
食欲がなくて15㎏痩せた。
貧血や風邪をひく回数も多くなり、肌も荒れに荒れている。
彼の好きだった長い髪は傷んでボサボサ。
学校に行くとみんな遠巻きに私を見てた。
〝もう、どうだっていい〟
高校も進学も恋愛も、もうどうだっていい。
いっそ私も死んでしまいた――
ドンッと、大きく硬いなにかにぶつかる。
壁よりは柔らかいし暖かい。
『――おっ、大丈夫か?』
あ……この声、懐かしい。
よく考えればこの匂いもなんだか誰かに似てる。
焦点の合わない虚ろな目で声のする方を見る。
私の頭上、彼と同じ高さのところに彼に良く似た――いや、あの日亡くなったはずの彼の顔が目に映る。