失恋ワケあり両想い(仮)
『……あ、れ?誰も…いない』
辺りを見渡し自分の状況を再度確認する。
ここは、保健室のベッド?
締められたカーテンの向こうで誰かの話し声が聞こえる。
誰か、いるのかな?
立ち上がろうとしたときなにかを踏む感覚があった。
足元を見れば誰かのブレザーを私の足が踏んでいる。
慌てて拾い上げ埃を払う。
物音で気づいたのか足音がこっちへ近づく〝起きたの?〟と、保健室の先生が問いかけカーテンを開ける。
『あら、元気そうよ』
『あ、はい。もう、大丈夫です』
〝誰への問いかけだろう〟と、先生の視線の先を目で追う。
棚の方から私を見る男の子の目は私の持つブレザーに注がれた。
あ……も、もしかして――
『――すいません!ベッドの下に落ちてて、気づかず踏んでしまいました!!ごめんなさい!クリーニング代だします!』
『ふ…くっ、くく……』
あ、この声……聞いたことある。
いや、間違えようがない。
少しの期待に胸を躍らせベッドから降りると真っ直ぐ男の子の方へ向かう。