私の嘘を完成させて

「…ごめんなさい。」

私が謝ると栄斗は私の
手首をそっと触る。

「…痛かったよな。」


…痛かった。苦しかった。

でも一番痛くて苦しかったのは
栄斗だったよね。


「栄斗…私…」

「わりぃ。ゆっくり休めよ。」


そう言って栄斗は
私の前から離れた。

行かないで。

そう言いたいのに
言葉は出なくて…

代わりに涙だけ出て
栄斗の背中を見る事しか
出来なかった。


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