旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
会見の記者の質問は軽々交わした私でも、さすがに結城の上層部と関係者がズラリと並ぶパーティーには緊張が走る。

颯のお父様お母様である総会長夫妻に、以前食事会でお会いした叔父様や奥様はもちろん、コンツェルン重役と各事業の取締役、株主に大手取引先と、続々挨拶をしては今日の祝福の礼を述べていく。

もちろんうちのおじいとお父さん、浅葱関係者も来ているので、そちらの対応もぬかりなくこなさなければならない。

デッキのステージではドイツの一流楽団が優雅な音色を響かせ始めたけれど、私はそれどころではなかった。花嫁修業二十年の努力は、まさにこの日のためにあったと言っても過言ではないだろう。

決して崩れないスマイル、指一本にまで行き届いた上品な振る舞い、貞淑さの中にも愛嬌を織り込んだ口調、ひとりずつ適切に内容を変えていく挨拶と会話。

私はこの二十年で培われた花嫁力をすべて集結させて、着々と訪客への対応を済ませていった。――けれど。

時間は間もなく八時。めぼしい人達への挨拶が大体済んだところで、私は気付く。

「ねえ、颯。充さんと遼くんはまだ?」

本家筋に近い人達から挨拶をしていったけれど、肝心の義兄弟にまだ挨拶をしていないのだ。

ふたりとも少し遅れて来るとは聞いていたけれど、もうとっくに来ていてもおかしくはない時間だ。ヘリポートには出航後に来訪したお客様のヘリが何台か到着している。もしかしてもう会場に着いているのではないだろうか。

そう思って颯に尋ねたときだった。

「コングラッチレーショーン!」

「きゃあっ!?」

突然背後からカラフルなフラワーシャワーを浴びせられ、私は目をまん丸くして振り返った。
 
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