旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「あはは! 初めまして、真奈美さん! ご婚約おめでとう!」
そこには、長めの癖っ毛を無理やりオールバックに撫でつけてまるで悪戯っ子のように笑う青年が立っていた。
雰囲気はだいぶ違うけれど、ひと目で分かる。ちょっとチャラそうに見えるのに決して下品にならない笑顔と所作、人を強烈に惹きつけるオーラ、身に着けているものは隙のないほど洗練されていて、持ち主の品格をありありと示している。
彼は間違いなく結城本家の一員、颯の弟だ。
「初めまして。遼くん……だよね?」
尋ねるまでもないけれど一応聞いてみれば、遼くんはニコニコとしながら私の手を取って握ってきた。
「そうだよ、あなたの義弟になる遼です。よろしくね。いやあ、嬉しいな。こんな綺麗な人が義姉さんになるだなんて」
まあ、なんと人懐っこいことか。俺様王子の颯とは大違いである。
末っ子ということで本家の子息としてはだいぶ自由に育てられたと颯からは聞いていたけれど、思っていた以上に伸び伸びとした弟だった。
「お前なあ、今日くらい時間通りに来いよ」
遼くんのあまりに砕けた態度に機嫌を損ねたのか、颯が私の腕を掴んで遼君の手から引き離す。
けれど遼くんが「兄さーん、コングラッチュレーショーン!」と飛びつくようにハグすれば、颯も眉尻を下げて笑い「お前、本当しょうがねえな」とハグし返したので、私は密かに安心した。どうやら颯も甘え上手な弟には弱いようだ。