旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
 
私も「ありがとうございます」と答えて微笑むけれど、正直この場をどうしていいか分からない。

だって、ただでさえ元婚約者との対面でどんな顔すればいいのか分からないのに、隣に立つ颯からはどんどん不機嫌オーラが滲み出てるんだもん。

私が思うに、颯がこの世で最も嫌いなのは充さんと比べられることだ。

颯が努力で結果を出すタイプだとしたら、充さんは天性の才能で結果を出せるタイプだ。そういう人と比べられることがどれほど悔しいことかくらい、私にだって分かる。

努力して、努力して、結果を出して。今や颯の活躍はケチのつけようがない。

なのに、総会長の継承権を放棄してコンツェルン上層部から身を引いたにも関わらず、周囲は未だ充さんを惜しむ目で見ている。

『やっぱり充が後継者になってくれたらなあ』『あんなに才能ある人物は他にいないのに』

口には誰も出さずとも、兄弟を見る眼差しが、雰囲気が、そう物語っている。

冷静に笑顔を保っているせいで誰も気づいていないだろうけれど、ひどく傷ついてるだろう颯の心中を想うと、私は胸がキリキリと痛くて仕方なかった。

とにかく! この雰囲気をなんとかしないと!

いっそミュージカルばりにいきなり歌でも歌い出して、この緊張感をぶっ壊そうかと企んでいたときだった。

「はい、じゃあみんなでカンパーイ!」

いつの間にかシャンパンを持って戻ってきた遼くんが、颯と充さんの間に割り込んできた。
 
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