旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
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翌朝。
スポーツ紙とネットニュースの一面を飾ったのは、月明かりの下、オリーブの樹の上でキスをする私と颯の写真と、『ロマンス? やりすぎ? 結城コンツェルン次期総会長、過激な婚約発表!』などと謳っている見出しだった。
「颯、見て! この写真、まるでフランス映画のワンシーンじゃない!? やだ、女優のオファー殺到しちゃうかも!」
いつもの夫婦のリビングで、スポーツ紙とパソコンを広げながらキャアキャアとはしゃぐ私を、颯はソファーに座って呆れた目で見ている。……腫れた左頬に氷嚢を当てながら。
「ゆうべ、あんだけ浅葱の爺さんや親父さんに怒られて、よくケロッとしてられるな……。お前、ほんとーに鉄の心臓してるよ」
「まあ、おじい達が怒るのはいつものことだし。久々にゲンコツくらったけど」
二十三にもなって父親からくらったゲンコツはさすがに痛かったし未だにタンコブになってるけど、私のテンションがそれぐらいで下がる訳がないのだ。
昨夜の颯の告白を思い出せば、私は絶叫して走り出したいほどの歓喜に駆られる。だって人生で初めて告白されて、めちゃくちゃロマンチックなファーストキスまでしちゃったんだもの! この初恋で王子様な愛しい旦那様と!
たとえあの直後、梯子で登ってきたスタッフに確保され、大騒ぎになり、おじい達にめちゃくちゃ怒られて、颯と揃って関係者各位に頭を下げに行き深夜まで対応に追われたとしても!そんなことで私の幸福とときめきは揺るぎようもないのだ。
まあ、右フックが思いのほかクリーンヒットして颯の綺麗な顔が一晩経った今でも見事に腫れていることには、少々罪悪感が湧くけれど。