旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
もっとこの幸福を噛みしめてイチャイチャしたかったけれど、さすがに昨夜はふたりとも疲れて、部屋に帰るなりベッドへ倒れ込んでしまった。
しかし、ぐっすり睡眠をとり元気いっぱいになった今、私は改めて颯と両思いであることを実感し、ニヤニヤが止まらないのだ。
「ねー、颯。私もう一回聞きたいな~」
私は、ソファーに座ってタブレット端末で今日のスケジュールを確認している颯の隣に座ると、甘えるように彼に肩を凭れ掛けた。
「は? 何が?」
けれど颯は照れているのか、タブレットを眺めたままそっけない返事をする。
「何って、決まってるじゃん。颯のき・も・ち」
あの『好きだ』を、私は何度だって聞きたい。なんなら録音してエンドレスリピートで部屋のBGMにしたい。
しかし。生まれて初めての両思いが嬉しくて全力でイチャイチャを要求する私に、颯はなんと無視をかましたのだ。
「そろそろ朝飯かな。食ったらまた昨日のお詫びとお礼回りだぞ、支度遅れんなよ」
「あれ?」
颯はタブレットをテーブルに置くとさっさとソファーから立ち上がってしまい、彼に凭れ掛かっていた私はそのままコテンと横に倒れる。
「あのー、颯さん?」
呼びかける私を知らんぷりして、颯はさっさと部屋を出て食堂にいってしまった。
一瞬、昨日のことは夢だったのではないかと錯覚するそっけなさだ。まさかとは思うけど、颯が私を好きなのは何か勘違いだったのだろうか。
昨日の記憶に齟齬がないか思い起こしながら、ハラハラとした気分で颯の後を追う。