旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

――ず、ズッキーニだ! ズッキーニ紳士だ!! なんでどうして!? 愛しのズッキーニ紳士が何故ここに!!?

そう、彼はまごうことなき私の初恋王子、ズッキーニ紳士だったのだ。

長い睫毛の涼しげな瞳。引き結ばれていても僅かにあどけなさ漂う可愛い口もと。通った鼻筋の整った顔立ち。間違いない。彼はあのとき私を恋に落としたイケメンだ。

ありえない再会に心臓がありえない速さと大きさの鼓動を打っている。ただのそっくりさんかとも思ったけれど、この胸のときめきが間違いないと確信していた。

あまりの衝撃に目を瞠ったまま唖然としていると、隣の藤波から「お嬢さま! ボケッとしないでください」と小声で怒られ、慌てて椅子から立ち上がった。

そしてズッキーニ紳士はまっすぐ視線をこちらに縫い付けたままやってくると、私の手前で足を止めニコリとたおやかに微笑んで見せた。

「“はじめまして”。結城颯です。本日はお会い出来て光栄です」

『はじめまして』に僅かに強く籠められたアクセント。それが何を意味するのかが分かって、私の心は舞い上がりそうになる。
 
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