旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
――結城が日本一のコンツェルンで一族経営の世襲制ゆえ、跡取を産む妻がどれほど重責かは分かっている。健康状態や素行なんかもまあ、おじいから結城に報告がいってるんだろうなということも薄々気付いていた。けれどさ。これはさ。
「キモッ!!!」
私は自制心が働く前に思いっきり無礼な拒絶の言葉を吐き出していた。
あまりにストレートな罵声に、さっきまで余裕綽々イヤミたらたらだった颯さんもさすがに目を剥く。
けれど私はそんな彼に構わず思いっきり眉間に皺を寄せて言葉を続けた。
「キモい! 何それストーカー? 結城の御曹司さまはストーカーが趣味なの? うわ、引くわー。ふつーそこまで調べる? 人のささやかな趣味をさあ、そんな意気揚々とあげつらって。何? あんた姑的な要素も持ってるの? うわ、引くわー」
学生時代、口喧嘩で負けたことのない私はここぞとばかりにその実力を発揮してしまった。だって仕方ない、世界一の紳士だと思っていた男がこんなイヤミ野郎だったなんて。私は失望のあまり盛大に彼を罵ってしまった。
そしてそれは効果テキメンだったようで、余裕と皮肉を浮かべていた颯さんの綺麗な顔がみるみる崩れていく。
「お……俺のどこがストーカーだ、このスッピンちょんまげ!! 鼻息荒くしてジャンプ読んでたくせに淑女気取るなんて笑わせんな! お前みたいなじゃじゃ馬娘、調査もせずに嫁に出来るわけねえだろ!」