旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
執事と暴君
【執事と暴君】
翌朝、目が覚めたら颯はすでに部屋にいなかった。
「真奈美さまはお疲れでしょうから、ゆっくり寝かせてさしあげるようにと、颯さまが申されたのですよ」
いつもより随分と高くなった日差しが射し込む部屋で、さやかが朝の紅茶を淹れてくれながら言った。
「疲れてるって……颯の方がソファーでうたた寝しちゃうぐらい疲れてたじゃん」
どうやら颯は結局ソファーでひと晩を過ごしてしまったらしい。私が目覚めたとき枕の位置も変わっていなかったし、何よりベッドの真ん中で私が大の字になって寝ていた状態を考えると、颯はベッドへは来なかったようだ。
私を気遣ってくれたのは嬉しいけど、せめて朝は顔を合わせて一緒に朝食を摂りたかったなと思う。昨夜は帰ってからあまり話も出来なかったんだし。
少し寂しく思いながら唇を尖らせると、さやかは部屋中のカーテンを開きながら言った。
「今日は接待も会食もないと仰ってましたから早く帰られると思いますよ。きっと颯さまも今夜は真奈美さまとゆっくり過ごされるおつもりですよ」
それを聞いてかぁっと私の顔色が赤くなる。なんだか昨夜のリベンジを私が期待してるみたいじゃん。
「べ、別に遅く帰ろうが早く帰ろうがどっちでもいいんだけどさ」
恥ずかしくてとっさにごまかしの言葉が口から出たけど、さやかはクスクスと笑うだけだった。