旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
なんと、浅葱家の筆頭執事で私の教育係である藤波が、いつもの燕尾服ではなくブラックスーツ姿で私の前に現れたのだ。
いったい何がどういうことなのかサッパリ分からず、私はひたすら目をしばたかせる。
「どうしたの藤波? なんであんたがここにいるの? ここ外部との接触禁止のはずなのに」
「お嬢さまと十日も連絡がとれず心配になった大旦那さまが、結城仁総会長に直々に面会の許可をお願いしてくださったのです。大旦那さまも旦那さまも、たいへんお嬢さまのことを心配してらっしゃいますよ。もちろん私も」
なるほど。ここは颯のテリトリーだけどさすがに総会長であるおじさまの許可があれば、面会も通さざるを得ないという訳か。
「なーるほどね。それで藤波が代表してようすを見にきたってわけか」
納得した私がウンウンと頷いていると、正面に立った藤波は険しい表情のままこちらをジッと見つめた。そうして上から下までマジマジと見つめると、僅かに表情を綻ばせる。
「……お元気、のようですね。痩せも太りもしていないし、顔色も悪くない。……少し安心しました」