旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

振り向くと同時に部屋の扉が勢いよく開かれ、私はそこに険しい顔つきで立っていた人物の姿に目を瞠る。

「は……颯!? どうしたの? まだ昼過ぎだよ?」

今日は平日、普通に考えて颯の帰宅はまだ六時間近く早い。それだけでも驚きなのに、彼が今までに見たことがない表情を浮かべていたことに、さらに驚きを禁じえない。

颯はものすごく怒っている。ひと目でわかるその表情、そして大股でこちらへ近付いてくるその態度。

そんな様相で目の前まで来られたものだから私は一瞬ビクリと竦んでしまったけれど――颯は容赦なかった。

「どうして勝手にこの部屋に男を入れた」

そんな意味の分からない責め句と共に、腕を強く掴まれた。

「いたっ……! 痛い、離してよ!」

「どうして俺の言うことが聞けないんだ! 面会は禁止だと言ったはずだ!」

「はぁ!?」

彼の言動の何もかもが理解出来なくて、私は忌々しく顔を歪めすっとんきょうな声を出してしまう。
 
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