旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「あんたまさか……藤波が面会に来たことを怒ってるの? てか、いたたた! 手、離してよ!」
まさかとは思うけれど、そんなしょーもないことで颯はこんなに激怒しているんだろうか。
腕を強く掴んだまま私をきつく見据える彼の瞳には、このうえなく真剣な怒りが滲んでいる。今まで何度もケンカしたし、一週間帰ってこないほど怒らせてしまったこともあったけれど……ここまで感情を剥き出しにして私を責める姿を見るのは初めてだった。
そんな怒りに任せたまま強く私の腕を掴んでいる手には加減がなく、はっきり言って痛い。
すると、颯の後を追ってきたさやかが慌てたようすで彼の手を咎めた。
「颯さま! どうか落ち着いてください! 真奈美さまに乱暴なさらないで……!」
けれど颯は止めに入ったさやかの手を乱暴に振り払った。その拍子にさやかの身体がよろけ、尻餅をつく。
「きゃっ!」
「ちょ……! 何してるの!? 女の子に乱暴するとか最低なんですけど!」
颯もそこまで強く振り払ったつもりはないのだろう、さやかが尻餅をついたのを見て一瞬戸惑いの表情を浮かべた。
けれど、唇を引き結んで再び険しい表情を浮かべると彼は再び私に向き直った。
「そんなことより今はお前と話してるんだ。どうして俺の言うことが聞けない。お前はこの結城コンツェルン次期総会長の婚約者なんだ。それが俺の目を盗んで男を部屋に連れ込むだなんて、恥を知れ。いい加減に結城颯の妻になる自覚を持て!」