旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
有無を言わせない強い口調でされた説教に、私は一瞬ポカンとしたあとジワジワと怒りが湧いてきた。
「ば、馬鹿じゃないの!? 男を連れ込むって、藤波はうちの執事なんですけど! そもそもあんたが私を監禁するから、うちの家族が心配して藤波を寄越したんでしょーが! それをいやらしい言い方しちゃって、馬っ鹿じゃないの!?」
あまりの馬鹿らしさに思い切り言い返してやったものの、颯も当然退かない。
「いやらしい言い方をされるのはお前に貞淑さが足りないからだ。執事だろうがなんだろうが、お前に俺の妻だという自覚が出来るまでは、誰であっても絶対に面会はさせない」
「何そのひっどい言いがかり! 私のどこが貞淑じゃないって言うの!?」
横暴すぎる颯の言葉にさらに歯向かえば、彼は皮肉じみた笑みを口元に浮かべて言った。「自分の胸に聞け」と。
23年間恋もせず貞操を守り抜き、今だってこんな理不尽な監禁生活を続けている私に向かって、一体何を疑う余地があるのだろうか。
心底呆れた私は侮蔑の表情を隠すことなく浮かべる。
颯は言い返すのをやめた私の腕を離すと、今度は開け放したままの扉を振り向く。そして今度は廊下に待機しているであろう秘書に向かって「メイド長を呼べ!」と大声で命令した。