旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「そんなことは関係ない。このホテルは誰のものだ? お前が仕えているあるじは誰だ? 言ってみろ」

「……は……颯さまです……」

顔を青ざめさせ消え入りそうな声で答えたメイド長を、颯は冷ややかな視線で見下ろすと腕を組んで嘆息した。そして。

「あるじの命令が聞けないメイドなど必要ない。このホテルのメイドグループは全員解雇だ」

耳を疑うような台詞を吐き出した。

一瞬で部屋の空気が凍りつき、メイド長とさやかの顔が真っ青に染まる。

けれど彼女らが口を開くより早く、私の手が颯の肩を掴んで振り返らせた。

「あんた馬鹿じゃないの!? メイドたちには何の責任もないでしょ!! このホテルの所有権をあんたが持っていようが、直属の雇用主があんただろうが、メイドたちが総会長の命令に逆らえるはずがないじゃない!! そんなことも分からないの!?」

颯のあまりの暴君ぶりに、私の堪忍袋の緒もついに切れた。

さっきは呆れた気持ちでいっぱいだったけれど、今は彼のあまりの横暴さに怒りしか湧かない。
 
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