旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
んも~、颯のヘソ曲がり! 意地っ張り! プライドエベレスト! 自分だって仲直りしたくて早く帰ってきたくせに! 少しは愛想ぐらいよくしなさいっつーの!
胸の奥でそう憤りながらも、顔はニコニコとスマイルを心掛ける。
ここまで私が下手に出てやってるのは、やっぱりあのときの颯のやるせない表情が胸に引っ掛かってたからだ。
何か思うところがあるなら言って欲しい。そう願うのはやっぱり私が彼に惚れてしまっているからかもしれない。
そんな聖母のように深い懐で笑顔を崩さずに接していた私だったけど――それがとんだ間違いだったと気付かされたのは、食事が済んだあとだった。
「お前、風呂は?」
風呂上りの髪を乱暴にタオルで拭きながら部屋に戻ってきた颯が、いつものようにソファーに座っていた私にようやく『ああ』以外の言葉をかけてきた。
食後さっさと入浴に行ってしまった颯だったけれど、どういう訳かほんの十数分で戻ってきた。ゆっくり湯に浸かって疲れを癒すというよりは、汗を流しただけのようだ。
疲れてるんだろうから、お風呂で少しはリラックスすればいいのに。そう考えながらも、ようやく彼が話しかけてくれたのだからと、私は素直に頷いて答える。
「夕方に入っちゃった。でももう一回入ろうかな、今度はベルベットローズのオイル試したいし――」
けれど、そんな私の言葉は颯の冷たい声で遮られた。