旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~

「ならさっさとベッドに行け」

「は?」

一瞬意味が分からなくてポカンとした表情を浮かべてしまう。

けれど颯はそんな私の腕を掴んで立ち上がらせると強引にベッドまで引いていき、なんと乱暴にその上に放った。

「きゃっ」

勢いよく倒れこんだ身体を、高級なスプリングが音もたてずに受け止める。驚いて目を瞠る私の視界に映ったのはさらに驚くべき光景で――羽織っていたバスローブを脱ぎ捨てた颯が、こちらの動きを封じるように私の身体を組み敷いてきたのだ。

「はっ? えっ? ちょ……何!?」

大パニックになって目を白黒させる私を、颯はやっぱり不機嫌そうな表情を滲ませたまま見下ろす。

明かりを背にしてるせいか、濃い影を落としている彼の端整な顔が、いつもより怖い。

「何じゃない。夫婦として当たり前のことをするだけだ」

低く掠れるような声で言われたその台詞が、いきなり私の胸を悲しく突き刺した。

「や……やだ! なんでこんな始め方なの!? 乱暴にしないでよ! 優しくするって言ったじゃん、嘘つき!」

颯と肌を重ねることは嫌じゃない。けど、こんな初体験は絶対に嫌だ。ムードもへったくれもないうえ、一方的で強引で。

私たちの間に愛がないのは分かってる。これが夫婦としての義務だということも。けれど、初めて身体を預けるときぐらいはそのことを忘れさせて欲しい。

『義務だ、義務だ』と思いながら破瓜の痛みに耐えるなんて、そんな悲しい初夜は絶対に嫌だ!
 
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