旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
「やだやだ! こんな風に抱かれるなんて絶対に嫌! 颯のケダモノー!!」
ムキになり首を振ってジタバタと抗えば、影を纏った颯の表情がさらに忌々しげに歪められる。私の肩を押さえている手にも、痛いほどの力が籠もった。
「逆らうな。お前がどう思おうとこれは避けられない義務だ。大人しく抱かれて名実共にさっさと俺の妻になれ」
「――っ……!!」
冷たい毒薬のように耳に滑り込んで来た言葉に、息を呑むほど胸が痛んだ。抑え切れない感情が溢れ出していくのが分かる。
次の瞬間、私は渾身の力を籠めて颯の手を跳ね除けると、その勢いのまま彼の頬を引っ叩いていた。
バチーンと乾いた打撃音が広い部屋に響いたような気がする。
自分の右手がジンジンと痺れを感じると同時に、目の前の颯の頬がみるみると赤くなっていった。
彼はしばらく呆然としていた。『何が起きてるか分からない』とポカンとした表情に書いてある。
私はその隙をついて組み敷いていた身体を押し退けると、上体を起こしながらヘッドボードまで後ずさった。
そして颯をきつく睨みつけながら口を開いた。