【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
きっと食事の前は固い話だったと思う。
起こるべくして起こるあちこちでの小競り合い。
それをなくそうなどとは誰も思っていない。
だけど小競り合いで終わらせる。
その意識は強いはずだ。
組長たちの男の意地というか
それこそ腕の見せ所とでもいうんだろうか。
自分の組も統率できないようでは、組長としての力量不足なんだと思う。
こういう意地ならどんどん通してほしい。
「真の極道への道は厳しいのよ」
頭で思っていた事が口に出たようだ。
「結衣さん今なんとおっしゃいました」
植木さんだ。
慌てて何でもないと口を塞いだけれど隼が言えって言うから口を開いた。
「真の極道への道は厳しいって」
「悪い人間だという事をひけらかすように堅気の世界で威勢を張るのはただのチンピラだ。
そんな人に仁義だ任侠だと言ったところでわかるわけがない。
悪と言われる世界だからこそその掟を守れる人間を人選した方がいいぐらいだって結衣は言うんだ。
採用試験や研修でもするのかって笑ったんだけどよ」
「悪だからこそ厳しい掟がある。それを守る事がどれほど大変な事かって教えていかなきゃなんねぇって事だよな」
響さんが私を見てからみんなの方を見た。
「極道を名乗るならその重さに責任をもってほしいじゃない」
「なんで結衣ちゃんは女やったんかな。えぇ極道になるやろに」
「いやだ。怖いもの」
「わしは四郎の方がよっぽど怖いばい」
また揄うような事を言う五郎ちゃんを横目でにらむと
「おぉ怖っ」と大きな身体を竦める。