【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
チラッと後ろを振り返ってみた。
自転車に乗った五郎ちゃんはなかなか絵になる。
だって自転車が小さいんだ。
そしてママチャリなんだ。
三浦さんも笑いたいのをきっと我慢している。
公園に入るときちんと3台の自転車を並べて止めた。
こうやって極道だって規律を守る。
五郎ちゃんなんて横の斜めになった自転車までまっすくに直しているんだ。
「意外と几帳面?」
「曲がった事が嫌なだけとよ」
そう。極道の中でも規律があり、まっすぐに極道を歩んでいる五郎ちゃん
「素晴らしい!ねっ三浦さん」
三浦さんは黙ったまま頷きそれを見た五郎ちゃんもにやついている。
池の近くまで歩きコーヒーの販売機の前で立ち止まる。
「私の驕りよ。どれがいい?」
「四郎の奢りとね」
笑いながら金色の缶を選びゴツイ手でボタンを押した。
「ボタンが抜けそうね」
「プッ」
五郎ちゃんは笑いながらガタンッという音とともに下の口から出たコーヒーをとった。
「三浦さんってば。三浦さんはどれ?」
「いやあっしは」
「またそういう雰囲気を壊すような事言わないの。あ、これだよね?いかにも苦そうなやつ」
「苦み走った男は選ぶもんが違うとね」
笑いながら五郎ちゃんがボタンを押し慌てて前に出た三浦さんに下の口から取り出すとポンッと投げて渡した。
三浦さんと五郎ちゃんも上下関係がある中で近づきつつある。
どっちかっていうと下がろうとする三浦さんを五郎ちゃんが引きずり上げるような感じだ。
五郎ちゃんはやたらと三浦さんに絡むというか
揶揄うような事を言うのだけれど
そこに悪意はまったく感じられなくて私にはその愛情表現のような行動が堪らなく嬉しい。