【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
自分の分を買うためにコインを入れると
「その水色の」
「これかい。甘いの飲むとね」
「缶コーヒーだけは、甘いのを好まれるんでごぜぇやす」
極道がコーヒーの販売機の前でこんな会話だ。
「それが七不思議でごぜぇやす」
真似して笑っている私に五郎ちゃんは出てきた缶もとってくれて
「熱いから気をつけるばい」
そんな気遣いまでしてくれる。
だけど寒さで少しかじかんだ手に温かさが心地いい。
いや熱っ
両手の中でコーヒーを右にやったり左にやったりしながら近くのベンチへと歩いた。
五郎ちゃんが座り私が座る。
予想通りベンチは塞がった。
だから三浦さんはすぐ横のベンチに座った。
「五郎ちゃん規格外サイズだね」
「スケールのでかい男ばい」
何を話しても楽しくて白い息を吐きながら笑顔になる。
幸せの時間が流れる私たちの前をランニングする人が何人も通りすぎ
黙ってその光景を見つめていた。
「東京もこげん静かなとこがあるとね」
「あるわよ。みなさんのお蔭で自転車でこうやって来られるようになってどれだけ嬉しいか」
「こんな時間を過ごすとは思ってもみやせんでした」
私たちの会話が3人できちんと成立することも嬉しい。
「きっと仲睦まじい3兄妹に見えるでしょうね」
「プッ3兄妹に見られとんのか」
「いつまでたっても結衣さんには、勝てる気がいたしやせん」
「勝とうなんて思う事が間違ごうてるばい。なっあははは」