【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
数人の警察官が先に到着し
私にもたれかかる五郎ちゃんと仁王立ちの三浦さんの顔を見ると
「なんだ暴力団か。内輪もめか。自業自得だな」
まるで吐き捨てるかのように言った。
極道じゃない。
三浦さんはさっきそう言ってた。
痛みで私にもたれかかる五郎ちゃんの身体を乱暴に起こそうと警察官の手がのびてきた瞬間
「触るな!」
私は怒りでその警察官を睨みつけた。
ハッとしたようにその手の動きも止まった。
「私の大事なもんに触るな!」
自分でも驚くほど低い声が出た。
人は激しい怒りを抱くとこんなにも低い声が出るのだろう。
「四郎。愛の告白はこんなとこでせんでえぇって。逆らったらいけんとよ」
五郎ちゃんは私を窘める。
それでも、暴力団だから何だっていうんだ。
すぐに救急隊の人がそばに来て
五郎ちゃんの状況を確認している。
警察の人とは違って1人の患者として丁寧に五郎ちゃんの身体に触れ
担架へとその大きな身体をうつ伏せでのせた。
「重そう」
「四郎、最後までひどい事いうとね」
無線の音が飛び交い三浦さんは警察の人と話しをし
いつのまにか、まわりはすごい人垣が出来ていた。
救急車へ向かう五郎ちゃんと歩きながら先程の警察官の前で立ち止まると
「五郎ちゃんは老夫婦を庇って撃たれたのよ。暴力団だから何。
撃ったのはあの男で守ったのは紛れもなく五郎ちゃんなのよ。
言っとくけどね、三浦さんも撃った男を捕まえたんだからね。
お手柄であって責められる事はひとつもないってよーく覚えといて」
怒りを口にする私に
「四郎、四郎えぇから早よ病院行かんとわし死んでしまうばい」
その言葉に慌てて掛け戻り
「三浦さん!五郎ちゃんについてくから」
大声で叫ぶと三浦さんは右手をあげて答えてくれた。
初めて離れて行動する事にOKが出たのは、襲われる心配がどうしたって見当たらないからだろう。