【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち


救急車の中では、死んじゃうって言った五郎ちゃんなのに


救急隊員の人に



「わし、四郎の大事なもんばい。大切に扱わんといけんとよ」


「お前聞いたか?大事なもんに触るな言うとったばい」


そんな戯言とも思える五郎ちゃんの言葉を救急隊の人は頷いて応えてくれる。



「五郎ちゃんあんまりしゃべると死んじゃうよ」


「これで死んでも想い残すことはなかと」


「ダメよ。それじゃ妹と弟が泣き暮らすでしょ」


救急隊の人にあまり話さないように言われても


五郎ちゃんは話続ける。



「痛くて話してるの?」


私が笑うと


「バレた?」


五郎ちゃんは笑い返した。


それでも相当呼吸が苦しいんだろう。


ハァハァと浅い息を繰り返す。



病院につくと大きな五郎ちゃんは荷物のように大勢の人の掛け声でストレッチャーにうつされ処置室へ入って行った。



私は病院に来た警察の人に家に電話をしたいと告げ出入り口に向かった。




ワンコールで隼は出た。



「結衣、どこの病院だ」


すでに隼にも連絡がいっていたようだ。



慌てて病院の名前を確認し隼に伝えた。



「結衣は怪我はないんだな」


「私は平気。だけど五郎ちゃんの背中に2本も矢が刺さってるの」



隼は家の中を移動しているようでパタパタと足音が聞こえる。



「意識は」



「あるよ。しゃべるなって言われてるのに、ずっとしゃべってるの。救急車の中でも私の事を笑わせるの。だけど血がいっぱい…血がいっぱい出て」



「結衣、平良は並の人間じゃねぇから大丈夫だ。今、親父とそっちに向かってる。いいか大丈夫だから落ち着いて待ってろよ」



処置室へ戻ると五郎ちゃんは手術室へ向かったと言われた。



いろいろな書類に私はサインをした。



内容をよく読んだかと聞かれるとパニックに近い状況で理解できていないというのが正解だろう。



もしその中に五郎ちゃんにとって不利益な内容があったら後で絞められるぐらいじゃすまない。病院に限ってそんな事はないのが有難い。





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