【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
お医者さんらしき人が私にタオルをかけてくれた。
「家の人に着替え頼んだ?そのままだとちょっとね」
言われて自分を見ると血だらけだ。
「怪我はありませんか?」
「はい。私はまったく。五郎ちゃんの容態は」
「鍛えた身体なのね。筋肉が鎧のように身体を守ったけれど肺と腸に達していて今はその処置の手術をしているところです」
「命に…命に別状はないですよね」
「肺の方が血胸を起こしているので、今のところは何とも。まずは手術をしてその後は経過を見ないと」
「お願いです。お願いします。五郎ちゃんを助けて下さい。刺青あるけど優しい極道なんです。おじいさんとおばあさんを守って撃たれたんです」
私は必死にお医者さんに縋った。
「患者はみんな平等よ。極道であっても何も変わらない。精一杯治療にあたるので落ち着いて無事を祈っていてあげてくださいね」
女医さんは、私の肩をポンと叩いて次の救急搬送に備えてまた戻って行った。