【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち
さっきから頻繁に振動しているスマホ。
「隼、ちょっといい?」
「あぁ」
スマホを取り出すとその画面を見せながら
「さぶちゃんからも電話きてるし八重さんからも奥野さんからも遠山さんまで来てる。げんちゃんなんて見てよこの着信履歴。どこまで知れ渡ってるの?」
「日本全国だな」
「すごっ。五郎ちゃんと三浦さんはヒーローだね」
「結衣、あははは」
「隼にも来てるでしょ。誰にかける?手分けしよ」
「じゃあ家にいる奥野には俺が電話する。遠山もそばにいるはずだ」
「うん、お願い。さぶちゃん心配してるよね。可愛い五郎ちゃんが怪我したんだもん。まだ報告出来ることがなくてどうしよう」
「今わかっている事を伝えてやれ。手術が終わったらすぐに連絡するって」
「わかった」
それから隼と二人で病院の外へ出ると心配している人たちへ次々と報告の連絡を入れた。
「組長、さぶちゃんって」
「福岡の滝田組長 滝田 雄三郎」
「八重さんは、近藤八重ってのはわかる。げんちゃんは誰だ」
「仙台 相川組長 相川 巌」
「結衣さんの携帯は恐ろしいな。自分はそんな履歴みたら恐ろしくててびびるわ」
「誰だったかな。結衣を極道に咲く白い花って言ったんだ。世間じゃ怖がられる男たちがよ、その小さな白い花を傷つけねぇよう大事にしてんだよ」
「極道に咲く花か」
「あぁ。極道の中にも綺麗な花はたくさんあんだよ。でもな、半日、結衣といてみろ。間違いなくお前もその白い花を守りたくなる」
「いやどっちかっていうと度肝抜かれてるよ」
「みんな最初は度肝抜かれんだよ。当然のように可愛い五郎ちゃんだぞ」
小川は右手で顎をさすりながら実際に接する藤堂結衣という女が極道という世界に不似合すぎる違和感を感じた。