【完】甘い香りに誘われて 5 極道×やんちゃな女たち


堅気の世界において極道の姐さんたちを尊敬していると言えば異様な目で見られるであろう。



「ただ違うのは、志摩子さんも八重さんも極道で生まれ育った人間って事。あの佐和子だって物の割り切り方は立派なもんだと思うわ」


育った環境というものが根付いているというのは確かにあるかもしれない。


私や由香里さんにとって事件と思えることも佐和子さんは笑っている。


「本当の強さを持っているのかもしれないわね」


藤堂組では、そこに植木さんの躾と教えというものが生きているのかもしれない。



ふと極道で生まれた姐さんたちを思い浮かべた。



確かに違う。




いい人か悪い人かとわけるなら全員がいい人だ。


だけど偏見ではなく物事に慣れているというか動じない強さを持っている。


「最初から極道になると思っていた響と違って隼も奏も極道になろうとは思ってもいなかったわ。奏なんて隼が継いで万々歳って感じでしょ」


私は極道の若頭になっている隼しか知らない。


それまで隼はどんな夢を持ち何になろうとしていたのだろうか。


「隼は何になりたかったんですかね」


「小さい頃は別として大きくなってからはそういう事も何ひとつ言わない子だった」


「聞いてみよう」


「私も聞きたいわ」


そう答える由香里さんは何だか淋し気だった。




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